【書籍レビュー】『0から分かる「マレーシア不動産投資の教科書」』ジャンナ・アリ著|左開きの一冊が、海外不動産本の「お決まり」を外してきた

書籍レビュー

【書評】ジャンナ・アリ『0から分かる「マレーシア不動産投資の教科書」』|左開きの一冊が、海外不動産本の「お決まり」を外してきた

書名 0から分かる「マレーシア不動産投資の教科書」――マレーシア人が教える低リスク×安定的に資産を増やす成功法則
著者 ジャンナ・アリ(クアラルンプール出身のマレーシア人。名古屋大学卒業後、日本企業勤務を経て現地で不動産会社を創業。YouTube「マレーシア不動産投資の窓口」を運営)
発行 海外の出版社から発行された日本語書籍(横書き・左開き)
発行年 2024年
構成 全10章
入手経路 資産運用イベントで無料配布されたもの(Amazonでも販売あり)
10章
YouTubeの内容をぎゅっと凝縮
100万RM
KLで外国人が買える最低価格の目安
0%
買い手側の仲介手数料(本来は)
2〜3ヶ月
日本にいながら購入完了までの期間

本を開いた瞬間、手が一瞬止まった。

ページをめくる方向が逆なのだ。右手で表紙を持って、左へめくる。洋書を開いたときの、あの感じ。もっと分かりやすく言うと、中学の英語の教科書を開いたときの感覚に近い。

奥付を見てようやく理由が分かった。日本の出版社ではなく、海外の出版社から出ている日本語の本だったのだ。

どこかの資産運用イベントでもらった一冊だ。どのイベントだったかはもう思い出せない。フィリピン、モンゴル、カンボジアと、なぜか海外不動産の本ばかり手元に集まってきたが、ついにマレーシアまで来てしまった。しかもタダで。

マレーシア不動産の知識はゼロ。興味津々で受け取ったのに、そのまま本棚で寝かせていた。改めて読んでみたら、これが意外と面白かった。

CORE THESIS(「業者の本」なのに、業者っぽくない)

著者のジャンナさんは、クアラルンプールで日本人向けに不動産を扱うエージェントだ。マレーシア不動産のYouTube番組をやっていて、自分も何本か見た記憶がある。

つまりこの本も、立場としては「業者さんが書いた本」になる。

ところが、読んだ印象がまるで違った。これまで読んできた海外不動産本には、だいたいお決まりの流れがある。人口ボーナスがすごい、経済成長がすごい、だから不動産は値上がりする、今がチャンス、詳しくは当社へ。この型だ。

この本には、その流れがほとんどない。代わりに並んでいるのは、マレーシアという国で外国人が不動産を買うときの、細かくて具体的なアレコレだった。

この本の芯は「夢を語る」ではなく「ルールを教える」。マレーシアの不動産がどういう仕組みで動いているのかを、現地の人間の目線で淡々と説明してくれる一冊だと思う。

⚠️ 著者バイアスの確認:とはいえ、著者は現役の不動産会社CEOで、この本は公式LINEの登録特典としても配られている。いわば見込み客に向けた「名刺代わり」の本だ。書いてあることは参考にしつつ、最終的な判断は自分の頭でやる。この前提は外さずに読みたい。

本書の構成マップ

読んでいて感じたのは、YouTube番組の要約っぽいということ。1章ごとに1本の動画になりそうなテーマが、テンポよく並んでいる。

第1章:著者の「5つの約束」

第2〜3章:なぜマレーシアか/日本とマレーシアの不動産の違い

第4〜5章:購入時の注意点/失敗しやすい人の特徴

第6〜7章:購入の流れ/業者選びの重要性

第8〜10章:良い物件の特徴/おすすめエリア/ローン金利を0%にする方法

「なぜマレーシアか」の話は第2章だけで、あとはほぼ実務の話。ここが他の海外不動産本との一番の違いだと思う。

外国人には「買える値段の下限」がある

一番驚いたのがこれだった。

マレーシアでは、外国人が買える物件に最低価格が決められている。しかも州ごとに違う。クアラルンプールなら100万リンギット以上が目安。日本円にすると、為替次第だがざっと3,000万円を超えてくる。

日本なら、外国人でも数百万円のワンルームが普通に買える。その感覚で「東南アジアの不動産は安いんでしょ」と思っていた自分は、ここで一度頭を切り替えさせられた。

買うには州政府の同意も要る。完成済みの物件と建築中の物件でも、注意点がまるで違う。この辺りの話は、知らないまま業者の説明を聞いていたら、たぶん何も疑問に思わずスルーしていたと思う。

買い手の仲介手数料は、本来「0%」

第7章の業者選びの話も印象に残った。

マレーシアでは、買い手が仲介手数料を払わないのが本来の形だという。日本の感覚だと、仲介手数料は買う側も払うものだと思い込んでいる。ところが日本人向けに3〜5%を上乗せして請求する業者もいる、と著者ははっきり書いている。

「良いことも悪いことも伝える」

— ジャンナ・アリ『0から分かる「マレーシア不動産投資の教科書」』第1章「5つの約束」より(趣意)

業者が業者の手口を書く。これはなかなかできることじゃない。もちろん「だからうちを選んで」という意図もあるだろう。それでも、読者が他社の説明を検証するための物差しをくれている点は、素直にありがたいと思った。

ローンは物件価格の半分まで、が基本線

外国人がマレーシアで住宅ローンを使う場合、借りられるのは物件価格の50%程度が一般的らしい。つまり、残りの半分は自己資金だ。

100万リンギットの物件なら、半分の50万リンギット、日本円で1,500万円以上を現金で用意する計算になる。

第10章には「金利0%にする方法」という、なかなか気になる章もある。ここは本の目玉の一つだと思うが、仕組みの裏で誰が何を負担しているのか、自分はもう少し時間をかけて考えたい。うまい話ほど一歩引いて読む。50代になって、ようやく身についた習性だ。

気になった点

YouTubeの要約っぽい構成なので、一つひとつの話はあっさりしている。深掘りしたい人は、結局動画のほうを見にいくことになると思う。

リスクの話も、書いてはあるが量は多くない。為替、空室、売却のしやすさ。このあたりは自分で補って考える必要がある。本の中で完結させようとせず、「質問リストを作るための本」として読むのがちょうどいい。

こんな人におすすめ

マレーシア不動産に興味はあるが、知識はゼロという人。

海外不動産セミナーで話を聞く前に、最低限の予備知識を入れておきたい人。

他の国の海外不動産本を読んで、どこか「売り込み疲れ」を感じている人。

フィリピン、モンゴル、カンボジア、そしてマレーシア。気づけば海外不動産の本が4冊、本棚に並んでいた。

その中でこの一冊は、夢よりもルールを語っていた。すぐに買うつもりはない。それでも、イベントでもらった無料の本としては、かなり割のいい一冊だったと思う。

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