【書籍レビュー】『アセットアロケーション革命』内藤忍著|「どんな投資を?」に「いろいろ」としか答えられない人へ
| 書名 | 内藤忍の「アセットアロケーション革命」 人生を変える「お金の成功戦略」 |
|---|---|
| 著者 | 内藤忍(1964年生まれ。東京大学経済学部卒、MIT経営大学院修了。マネックス証券の創業に参加。資産デザイン研究所代表) |
| 出版社 | サンライズパブリッシング |
| 発売 | 2020年9月 |
| ページ数 | 246ページ |
| ISBN | 9784782904985 |
| 入手経路 | 有料の資産運用セミナーのお土産(別のイベントでももらい、手元に2冊) |
別々のイベントでもらって本棚に
お金の考え方から配分まで
「いろいろ」を分ける物差し(箱・中身・道具)
資産全体を書き出すシート
「どんな投資をしていますか?」
投資の話になると、よくこう聞かれる。この質問に適切に答えられる人って、果たしているんだろうか。
「NISAをやっています」「米国株をやっています」「株主優待株をやっています」。こういうふうに、すぱっと答えられる人がちょっとうらやましい。
自分の場合、答えようとすると頭の中がこうなる。NISAとiDeCoと……。株式は国内と先進国と……。デリバティブは、オプション取引とFXと……。
たいへんだ。全部言っていたら相手が困る。ということで、口から出てくるのはいつも「まあ、いろいろやっています」になる。
ずっと、自分の説明が下手なだけだと思っていた。この本を読んで、答えられないのは話し方の問題じゃなく、自分の中で投資が整理されていないからなんじゃないか、と気づかされた。
同じ本が本棚に2冊ある
この本は自分で買ったものじゃない。1冊目は、有料の資産運用セミナーのお土産でもらった。2冊目は、別のイベントでまたもらった。二度も手渡されるということは、配る側にとって「まずはこれを読んでほしい」という本なんだろう。
1冊目のときは、正直パラパラめくって本棚に差したままだった。タイトルに「革命」とあるわりに、章立てはリスクとリターン、金融資産、税金と、どこかで読んだような並びに見えたからだ。
ちゃんと読もうと思ったのは、FPやIFAと話をしたときの経験を思い出したからだ。何人と話しても、だいたい同じところに行き着く。「一度、資産の棚卸しをしましょう」。この本の後半に出てくる「アセットアロケーションシート」を見て、ああ、面談で聞かれるのはこれか、と腑に落ちた。
CORE THESIS(何を買うかより、どう配分するか)
この本が言いたいことはシンプルだ。お金の不安を消すのは、儲かる銘柄探しではない。自分の資産全体の配分を決めて、それを見える化すること。
マネックス証券の創業に関わり、長く金融業界にいた人が行き着いた答えが「何を買うか」ではなく「どう配分するか」だった。それだけで一つの説得力がある。
多くの人は「何を買えばいいですか」から投資に入る。この本は「今、何を持っていますか」から入れと言っている。革命というのは中身の新しさではなく、入口の置き場所を変えることなんだと思う。そして「今、何を持っていますか」は、自分がうまく答えられなかった「どんな投資をしていますか」とほとんど同じ質問だった。
「日本人が今まで知らなかった、資産を守り増やす戦略。」
— 内藤忍の「アセットアロケーション革命」内容紹介より
本書の構成を3つのブロックで整理する
全6章、246ページ。投資本としては読みやすい厚さだ。ざっくり3つに分けるとこうなる。
ブロック1:考え方の土台(第1〜2章) お金との付き合い方、リスクとリターンの捉え方
ブロック2:資産の中身(第3〜5章) 金融資産を使った運用、実物資産を使った運用、税金のポイント
ブロック3:まとめ上げる(第6章) アセットアロケーションでお金の不安を解消する
目を引いたのは、金融資産と実物資産にそれぞれ一章ずつ割いているところだ。株や投資信託だけでなく、不動産や金のようなモノとしての資産も、同じ「資産」として並べて数える。この姿勢が本全体を通っている。
アセットアロケーションシートは「棚卸し表」だった
一番使えると思ったのがこのシートだ。資産の種類ごとに欄が並んでいて、自分が持っているものを書き込んでいく。埋まる欄と空白の欄が、はっきり分かれる。
FPやIFAとの面談で聞かれる項目は、ほぼこれで確認できる。自分で先に埋めておけば、面談の最初の聞き取りはかなり短くできるはずだ。
最初に見たときの感想は「ちょっと単純すぎないか」だった。資産の種類が並んでいて、金額を書くだけ。オプションやCFDまでやっている身としては、自分のやっていることがこの欄に収まるのか、という気もした。
でも考え直した。貯金しかない人にとっては、これ以上ない地図になる。
預金の欄だけが埋まっていて、あとは全部空白。それを見れば、次に何を考えればいいかが一目で分かる。空白の欄は「まだ手をつけていない選択肢」の一覧だ。そこに少しずつ資産を置いていけばいい。単純すぎるというのは、ある程度投資をしてきた人間の感想で、入口に立っている人にはこの単純さがちょうどいいんだと思う。
画面の外にある資産も数える
自分の資産を考えるとき、頭に浮かぶのはだいたい証券口座の評価額だ。NISA、特定口座、iDeCo。画面に数字が出てくるものだけを「自分の資産」として数えてしまう。
実際には、持ち家もあれば、貯蓄型保険の解約返戻金もある。画面に出てこないだけで、それも資産の一部だ。自分も、持ち家を資産配分の中に入れて考えたことは一度もなかった。家は家、投資は投資。頭の中で別々の箱に入れていた。
箱を一つにまとめると、見え方が変わる。証券口座の中ではそこそこ分散しているつもりでも、全体で見ると不動産(持ち家)の比率がやたら大きい。50代なら、そういう人は珍しくないんじゃないか。
気になった点
経験者にとっては、既に知っている話が多い。リスクとリターン、資産クラスの分散、定期的な見直し。「革命」という言葉から新しい理論を期待すると、肩透かしを食うかもしれない。
⚠️ 本書は2020年の出版だ。税金の章などは、2024年に始まった新しいNISA制度より前の内容になる。考え方の骨組みは今も通用すると思うが、制度の細部は最新情報で確認しておきたい。
もう一つ。この本は二度とも、資産運用のセミナーやイベントで配られていた。配る側が伝えたいメッセージと本の中身が重なっているのは自然なことだ。読む側は「なぜこの本が配られているのか」を頭の片隅に置いておくと、受け取り方のバランスが取りやすいと思う。
「いろいろ」になってしまう理由が見えた
読み終えて一番残ったのは、シートの中身より、冒頭の質問のほうだった。シートを眺めているうちに、自分が答えられない理由がなんとなく見えてきた。
箱 NISA、iDeCo、特定口座(口座や制度の種類)
中身 国内株、先進国株、新興国株、債券、金(資産の種類)
道具 現物、投資信託、オプション、CFD(取引の手段)
自分は答えようとするたびに、この三つを全部ごちゃまぜにして一列に並べようとしていた。そりゃ、たいへんなわけだ。
アセットアロケーションシートは、このうち「中身」だけを取り出して並べる。口座がどこか、手段が何かはいったん脇に置く。そうすると、ごちゃごちゃしていた投資が急にすっきりした形になる。
大事なのは、すぱっと答えることじゃない。自分の中に、一枚にまとまった絵があるかどうか。絵があれば相手に合わせて説明の粒度を変えられる。なければ「いろいろ」としか言えない。
同じ本を2冊もらったのは、たぶん偶然だ。でも1冊目を読み流した自分に「ちゃんと読め」と言われた気がしなくもない。
こんな人におすすめ
貯金はあるけれど、投資は何から始めればいいか分からない人。
FPやIFAとの面談を控えていて、自分の資産を事前に整理しておきたい人。
「どんな投資をしていますか」と聞かれて、つい「いろいろ」と答えてしまう人。
単純すぎる。それは今も思う。でも単純だから、貯金しかない人にも、いろいろやりすぎて説明できない人にも、同じ一枚が使える。手元のもう1冊は、「貯金しかないんだよね」という人がいたら、そのまま渡してもいいと思っている。
「いろいろやっています」は嘘じゃない。でも、その「いろいろ」の中身を、自分だけは一枚で説明できるようにしておきたい。


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