【書評】ずる賢い人のための億万長者入門|資産運用EXPOでただで貰ったら、予想外に刺さった
| 書名 | ずる賢い人のための億万長者入門 |
| 著者 | 佐野Mykey義仁 |
| 出版 | 2024年(KADOKAWA) |
| ジャンル | 投資マインドセット / 思考法 |
資産運用EXPOのブースで配っていた本だった。正直、タダ配り系の本に期待していなかった。「億万長者入門」というタイトルもどうも胡散臭いし、「成功者の9割は性格が悪い」という副題はさらに怪しい。鞄に突っ込んで、2週間ほど放置した。
読み始めたのは、ほぼ手持ち無沙汰からだ。出張の新幹線で他に読むものがなかった。
読み終えたのは、乗り過ごすかと思うくらいのめり込んでいたからだ。496ページある。それを一気に読んだわけではないが、読後感として「なんだこれ、まともなことが書いてあるじゃないか」という気持ちが残った。
タダ配りとは思えない分量
資本主義を攻略する「ゲーム」の分類
思考編と投資・経営編に分かれた構成
著者が展開してきたビジネスの国数
CORE THESIS
この本の核心は、「資本主義はゲームであり、ゲームである以上ルールがある。そのルールを正確に理解し、感情と常識を排除して動ける者だけが勝つ」という主張だ。
著者の佐野Mykey義仁氏は、YouTubeチャンネル「マイキーの非道徳な社会学」で知られる投資家・経営者。IQ150超を自称しており、最初は若干引いた。ただ本を読むと、自己PRというよりは「思考の精度を上げろ」というメッセージの補強として使っているのがわかる。
「この本は特効薬ではない。しかし、伸び悩んでいる(かもしれない)あなたにブレークスルーをもたらす劇薬にはなるだろう」
— 佐野Mykey義仁『ずる賢い人のための億万長者入門』より(趣意)
「劇薬」という言葉をそのまま受け取ると大げさに聞こえる。ただ読後に思ったのは、投資本にありがちな「とにかく長期・分散・低コスト」一辺倒の安心感とは、まったく別の思考回路を刺激してくる本だということだ。
読む前と読んだ後
読む前の自分の正直な感想は、「また自称天才が書いたマウント本でしょ」というものだった。50代になって投資を続けてくると、こういうタイプの本には少し免疫ができている。
読んだ後の感想は、少し違う。まず、具体性がある。「感情を排除しろ」「常識に縛られるな」という系の言葉は投資本に山ほどあるが、この本はそれを「どうやって」まで踏み込んでいる。特に「減点思考デューデリジェンス」(第2章)の考え方は、50代の個人投資家としても使える視点があった。
投資先を選ぶとき、私はこれまで「ここが良い」を積み上げる加点方式で考えがちだった。著者の言う「減点思考」は逆だ。どこが悪いか、どこに嘘があるかを先に洗い出す。ネガティブな情報を能動的に探す。これは実は、バフェットやマンガーが言ってきたことに近い。
「4つのゲーム」フレームワーク:投資・ビジネス・キャリア・人間関係を「ゲーム」として構造化し、それぞれの勝利条件を定義する。感情ではなくルールで動くための土台となる考え方。
50代個人投資家として引っかかったところ
「脱日本」(第4章)は読んでいて若干モヤッとした。日本市場の構造的な問題を指摘し、海外への展開・資産の分散を促す内容なのだが、著者がカンボジアやアジア新興国への投資経験が豊富なこともあり、やや「海外こそが正解」という空気が強い。
個人投資家として思うのは、海外展開や未公開株(第9章のテーマ)は、それなりの資産と情報ネットワークを持っていないとリスクが高すぎるということだ。「適格投資家」への道を歩め、という最終章のメッセージは確かにそそられるが、50代の一般的な個人投資家が即座に実践できる話かというと、かなり距離感がある。
ただ、そこを差し引いても、前編の「思考の型を変える」部分は読む価値があると思っている。投資の技術より先に、投資家としての頭の使い方を問い直してくれる本だ。
⚠️ 未公開株・海外新興国への投資は、情報格差とリスクが極めて大きい。本書後半の実践部分は、相応の資産規模と経験を持つ投資家向けと読んだほうが安全。
こんな人に向いている
インデックス投資を「理屈ではわかっているが、本当にこれでいいのか」と感じている人。または、個別株やアクティブ投資をしているが、どこかで自分の思考の浅さが気になっている人。タイトルと副題のせいで手が伸びにくいが、この本が問い直しているのは「億万長者になる方法」より「あなたの思考のクセ」のほうだ。
逆に、インデックス投資の継続方法やポートフォリオ設計の実務的な知識を求めている人には向いていない。そういう本じゃない。
タダで配っているブースを資産運用EXPOで見かけたら、受け取っておいて損はないと思う。少なくとも自分は、鞄に2週間入れたままにしたことをやや後悔している。


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