| 書名 | 本業以上の月収を達成させる「株式投資の実践バイブル」 |
|---|---|
| 著者 | 高橋慶行(株式会社ファイナンシャルインテリジェンス代表取締役/「投資の学校プレミアム」代表) |
| 出版社 | ファイナンシャルインテリジェンス |
| 発売日 | 2024年4月30日 |
| 定価 | 1,650円(税込) |
| ISBN | 9784910837475 |
| 入手経路 | 投資スクールのオンラインセミナー申込特典として郵送されてきたもの |
電子書籍が定番の特典で、まさかの現物
スクールがうたう累計受講者数
出版社は著者が代表の会社
自分の運用:短期・中期・長期
ポストを開けたら、本が一冊入っていた。オンラインセミナーに申し込んだだけなのに。
投資スクールのセミナーに申し込むと、たいてい特典が付いてくる。で、その特典はだいたいPDFか電子書籍だ。ダウンロードリンクがメールで届いて、フォルダに保存して、そのまま開かない。正直、そういうパターンばかりだった。
今回は違った。ちゃんと製本された、紙の本が郵送されてきた。印刷代も送料もかかっているはずだ。これはちょっと珍しい。本気度が違うのか、それだけ集客にお金をかけられる商売なのか。たぶん両方なんだろうな、と思いながらページをめくった。
著者の高橋慶行さんは「投資の学校プレミアム」の代表で、出版元のファイナンシャルインテリジェンスも高橋さんが代表を務める会社だ。つまりこの本は、スクールの入口として作られた一冊ということになる。それ自体は悪いことじゃない。そういうものだと分かったうえで読めばいい。
CORE THESIS(個別株とトレードで「月収」をつくる)
副題の「本業以上の月収を達成させる」がすべてを物語っている。この本が目指しているのは、資産をじっくり育てることではなく、株式投資のトレードで毎月の収入をつくることだ。
中身は、個別銘柄でいくら儲かった、何倍になった、という実例がチャートと一緒にずらりと並ぶ構成になっている。そして話の行き着く先は、TradingViewに設置できる専用インジケーター。これを使えば、あなたもこういうトレードができますよ、という流れだ。
実例チャート → 専用インジケーター → スクールで学ぶ。本としての主張と、スクールへの導線がきれいに一本の線でつながっている。読みやすいのは、たぶんそのせいだ。
自分はTradingViewもインジケーターも使っている
先に言っておくと、トレードそのものを否定する気はまったくない。
自分もTradingViewを使っているし、インジケーターを入れて短期のトレードもしている。オプション取引で、数週間から数か月の中期的なポジションも持っている。そのうえで、新NISAとiDeCoで長期の積立も続けている。
だから、チャートの実例を見て「こんなにうまくいくわけない」と冷めた目で切り捨てるつもりはない。インジケーターが判断の助けになる場面があるのは、実際に使っていて知っている。
ただ、使っているからこそ分かることもある。インジケーターは、後から見ると驚くほどよく当たって見える。チャートの右端に立って、明日どうなるか分からない状態でサインを信じるのとは、まるで別物なんですよね。
どうしても容認できない「積立を笑う流れ」
この本を読みながら、ずっと引っかかっていたことがある。本そのものというより、最近の投資スクールまわりでよく見かける、ある流れのほうだ。
積立投資なんてたかが知れている。オルカンのリターンなんてこんなもんでしょ。だから、スクールで投資の勉強をしましょう。
— 最近のスクール勧誘でよく見かける流れ(筆者の要約)
流れとしては理解できる。スムーズだと思う。年5〜7%程度の期待リターンを示して、「これじゃ老後に間に合わないですよね」と不安をあおり、その先にトレードの技術を置く。セールスの組み立てとしては、よくできている。
でも、長期投資や積立投資をバカにするのは、それとは話が違う。
オルカンやS&P500の積立は、退屈で、地味で、劇的な実例チャートにはならない。その代わり、特別な技術がなくても、相場に張り付く時間がなくても、多くの人が市場の成長をそのまま受け取れる仕組みだ。トレードで勝ち続けられる人は限られるけれど、積立はほぼ誰にでも開かれている。
積立投資は、個別株の分析や頻繁な売買をしなくても始められる。もちろん元本割れのリスクはあるし、誰にでも無条件に向いているわけではない。それでも、長期的な資産形成の土台として、多くの人が取り組める方法だと思う。
月収をつくりたい人がトレードを学ぶのは自由だ。でもそのために、ほかの人がコツコツ続けている積立を「たかが知れている」と下に見る必要はどこにもない。
⚠️ トレードと積立は、優劣ではなく役割の違いだと思う。積立は資産の土台をつくる。トレードはその上で、時間と技術を使って上乗せを狙う。土台を笑う理由はない。
短期・中期・長期は「どれか一つ」じゃない
自分の運用をざっくり整理すると、こうなる。
| 時間軸 | やっていること | 役割 |
|---|---|---|
| 短期 | TradingView+インジケーターでのトレード | 技術と時間を使った上乗せ |
| 中期 | オプション取引 | 相場観を数週間〜数か月単位で形にする |
| 長期 | 新NISA・iDeCoでの積立 | 何があっても続ける資産の土台 |
この三つは競合していない。むしろ長期の積立がどっしり構えているから、短期や中期で多少負けても慌てずにいられる。土台がなかったら、一回の損切りで心が折れていたかもしれない。
50代になって思うのは、若い頃にこの順番を知っていればよかった、ということだ。先に土台、それから上乗せ。逆にすると、だいたい痛い目を見る。
この本の良かったところ
文句ばかり言っているようだけど、良いところもちゃんとある。
まず、とにかく読みやすい。実例とチャートが中心なので、トレードの経験がない人でも「個別株ってこういう動きをするのか」というイメージはつかめる。積立しかやったことがない人が、相場の別の顔をのぞくきっかけにはなると思う。
それから、TradingViewというツールの存在を知るきっかけにもなる。チャートを自分で見る習慣がつくのは、長期投資家にとっても悪いことじゃない。暴落のとき、過去のチャートを自分で確かめられる人は、ニュースの見出しに振り回されにくくなる。
気になった点
並んでいる実例は、当然ながらうまくいった例だ。同じインジケーターでサインが出て、うまくいかなかったトレードがどれだけあったのか。勝率や損失の大きさ、つまりトータルの成績は、実例の並びからは見えてこない。
これは本の性質上しかたない部分もある。ただ、読む側はそこを自分で補わないといけない。勝った実例を十個見せられるより、負けたトレードも含めた百回分の記録を一つ見せてもらうほうが、判断材料としてはずっと役に立つ。
もう一つ。「本業以上の月収」という言葉は魅力的だけど、トレードには相場に向き合う時間と、負けを受け入れる胆力が要る。本業を持ちながら、という前提なら、なおさらハードルは高い。そこはさらっと流さずに考えたほうがいいと思う。
読み終えて残ったこと
紙の本を送ってくるくらいだから、この会社は本気なんだと思う。その本気は、スクールに人を集めることに向いている。それは商売として当然のことだ。
引っかかったのは、そこに積立投資を踏み台にする空気が混ざっていることだった。トレードを勧めるのはいい。でも、地道に積み立てている人の足元を崩すような言い方で人を集めるのは、やっぱり違うと思う。
インジケーターは道具だ。積立も道具だ。どちらが上でも下でもない。自分の時間と性格と資金に合わせて、組み合わせて使えばいい。この本は、その当たり前をあらためて確認させてくれた一冊だった。皮肉なことに、本が勧める方向とは少し違う形で。
こんな人におすすめ
積立はやっているけれど、個別株やトレードの世界がどんなものか一度のぞいてみたい人。
TradingViewやインジケーターに興味があって、どんな使われ方をしているのか具体例で知りたい人。
投資スクールのセミナーに申し込もうか迷っていて、その入口がどんな作りになっているか先に確かめておきたい人。
ただし、もし読んでいるうちに「積立なんてやめてトレード一本で」という気持ちが湧いてきたら、そこで一度本を閉じてほしい。土台は、そう簡単に手放していいものじゃないから。


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